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0.6%の唾液中の成分がもたらす、口腔内に不可欠な役割とは?唾液のおどろくべき働きを紹介
2023.7.04 歯と健康こんにちは、歯科衛生士の井尾です。
みなさんは唾液に様々な働きがあることを知っていますか?唾液の働きは「食べ物の消化を助ける」とイメージしている方が多いのではないでしょうか。唾液に含まれるアミラーゼという酵素によってデンプンの分解をサポートするなど、食事をするうえで欠かせませんが他にも日頃生活している中で、歯や粘膜などに起こるトラブルから防御をしてくれているんです。
今回はそんな唾液の働きについて詳しくお話しをさせていただきます。
唾液の働き
唾液は口腔内にある”唾液腺”から分泌されており、成人の分泌量は1日あたり1.0〜1.5リットルほどです。唾液の主成分は99.4%水で出来ています。あとの0.6%は無機質と有機質になります。その0.6%しか存在しない成分が口腔の機能に重要な役割を果たしています。
無機質と有機質の成分
無機質・・・主なものはナトリウム、カリウム、塩素、カルシウム、リン酸および重炭酸
微粒元素はフッ素など
有機質・・・糖タンパク(ムチン)、免疫グロブリン、酵素(アミラーゼ、リゾチーム、ペルオキシダーゼ)、アミノ酸、グルコースなど
たった0.6%でも無機質と有機質にもこれだけの成分が含まれています。
そしてここからは、その成分の作用と役割を6つに大きくわけてお話していきます。
①自浄作用
唾液はお口の中の汚れを洗い流す役目を果たします。
②緩衝作用
唾液中の重炭酸によって、お口の中のPHを中性に保とうとするはたらきがあります。飲食後は、お口の中が酸性に傾きます。酸性の状態が長く続くと歯が溶けて虫歯になりますが、唾液のもつ緩衝作用によってお口の中をいち早く中性に戻すことで虫歯になることを防ぎます。
③再石灰化作用
唾液中のカルシウムとリンが作用し、酸によって溶けかかった歯を修復します。
④潤滑作用・湿潤作用
唾液中の糖タンパク質(ムチン)により、口腔粘膜の滑りを良くし、水分とともに咀嚼や嚥下を容易にします。
⑤抗菌作用
口から入ってくる細菌の繁殖を酵素、免疫グロブリンなどによって抑制し、また癌の原因にもなる活性酸素を減少させるとも言われています。
⑥消化作用
唾液中の酵素(アミラーゼ)によって、でんぷんを分解し、体内に吸収しやすい状態にします。
他にも生体防御のはたらきだったり内分泌作用とたくさんの機能があります。
このように唾液にはさまざまな機能があり、お口の中の衛生状態を守ってくれるとても大切な存在で健康維持に重要な働きをしています。特に歯は唾液の作用によって守られているので、唾液の減少は虫歯や歯周病の大きなリスクになります。睡眠中は唾液の分泌量が極端に減少し、菌が繁殖しやすい環境のため夜の歯磨きは徹底して行うようにしましょう。
唾液が減る原因とは
・加齢
・ストレス
・口呼吸
・喫煙
・アルコール、カフェイン、塩分の過多
・薬の副作用
・放射線治療
・糖尿病
・口腔乾燥症
・シェーグレン症候群
などがあります。
唾液を増やすポイント!
○よく噛んで食事をする
まずは意識的に”噛む”食習慣のきっかけづくりをしていきましょう。噛むことは、唾液の分泌を促進させます。
例えば、白ごはんではなく雑穀入りごはん。また”噛む”を意識した食材(硬いもの、弾力があるもの、繊維質の多いものなど)を選び調理をする。口に入れたものが大きく歯ごたえがあると、自然と咀嚼します。水や汁物で流し込むのも控えましょう。
○こまめに水分補給をする
唾液を作るためには水分は必要です。水分補給の際はコーヒーや紅茶カフェインを含んだものではなく、水や麦茶などがおすすめです。
○口呼吸ではなく鼻呼吸を意識
口呼吸は乾燥の原因になります。口を閉じて鼻呼吸をするように意識しましょう。マスクをしていると口呼吸になりやすいので注意が必要です。
○生活習慣を見直す
アルコール、カフェイン、塩分の摂りすぎは控えましょう。
○唾液腺のマッサージをする
唾液腺である耳下腺(両耳の前)、顎下腺(エラの下あたり)、舌下腺(舌の下)を優しくマッサージしましょう。最も大きなものが耳下腺で、分泌量も多くなります。
○舌を動かす
舌を動かすと唾液腺が刺激されて唾液が分泌されやすくなります。特別な舌の運転でなくても口を閉じて舌をくるくると動かすだけでも、唾液が分泌されるのを実感できると思います。
たくさん唾液を出して健康な口腔内を保ちましょう!
マッサージ方法などお気軽にご相談ください。
毎日暑い日が続いていますね、普段より唾液がネバネバしている時は脱水が進んでいることも考えられます。水分をしっかりとって、熱中症予防をしていきましょう。
この記事の監修者
デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科
院長坂本 果歩
地元の大分県の大分県立大分上野ヶ丘高等学校卒業後、
愛知学院大学歯学部歯学科に進学、卒業しました。
その後、愛知学院大学附属病院での研修を経て、愛知県内の地域密着型の医院、都心型の医院で勤務することによりたくさんの治療のスキルを学びました。
歯周病治療に力をいれた、再治療の少ない治療を目指して口腔外科、インプラント、矯正などの幅広い診療も行っています。
学歴・経歴
2016年 愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
2017年-2018年 愛知学院大学附属病院 勤務
2018年-2023年 愛知県内 歯科医院 勤務
2021年-2022年 藤田医科大学 口腔外科 研究生
2022年 名古屋市 歯科医院 分院長
2023年 デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科開業
現在に至る
所属団体
日本臨床歯周病学会
日本口腔インプラント学会
愛知インプラントインスティチュート
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会