インプラントにも歯周病がある!【インプラント周囲炎】の症状・進行の流れ・予防のポイントを知ってインプラントを長く使い続けよう
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歯周病の影響はお口の中だけにとどまらない!全身に及ぼす歯周病の脅威を解説
2024.9.03 歯周病・予防治療こんにちは、デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科の歯科衛生士の國竹です。
皆さんは歯周病が口腔内だけでなく全身の健康にも深く関わっていることをご存知ですか?
30代以上の約3人に2人が罹患していると言われるほど身近な歯周病ですが、歯や歯ぐきへの影響以外に全身疾患のリスクを引き上げることがわかっています。
今回は歯周病と全身疾患の関わりについてお話ししていこうと思います。
歯周病が全身に及ぼす影響
歯周病の原因となるものは様々ですが、その中でも多いのが細菌感染によるものです。歯の表面に付着している歯垢(プラーク)は細菌の塊です。
歯垢は歯ブラシが不十分な場所に溜まり時間と共に量は増えていきます。
歯周病菌のほとんどは嫌気性菌と呼ばれるもので、酸素が苦手という特徴があります。つまり嫌気性菌は、酸素が少ない歯と歯の間や歯と歯茎の隙間にできる溝である歯周ポケット内に多く存在します。歯周ポケットが深くなるほど酸素が行き届かなくなり嫌気性菌が活発化しやすい環境になってしまうというわけです。
炎症によって出てくる毒性物質が歯茎の血管から体内に入り様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因になります。
狭心症・心筋梗塞
心臓に酸素や栄養を運ぶ冠動脈が動脈硬化を起こすと血管が狭くなり血流が悪くなってしまいます。動脈硬化は不規則な食習慣や運動不足、ストレスなどの生活習慣が要因とされてきましたが、別の因子として歯周病菌の細菌感染もあることがわかってきました。歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て血管内にプラーク(粥状の沈着物)が生じることで血管が細くなります。プラークが剥がれて血の塊ができるとその場で血管が詰まってしまいます。
脳梗塞
脳梗塞は脳の血管が詰まってしまい、酸素や栄養が届かずに脳細胞が死んでしまう病気で、日本人の死因の第3位に入っています。
そして脳梗塞は口の中の病気と関連していることがわかっています。
脳の血管のプラークが詰まったり、頸動脈や心臓から血の塊やプラークがとんできて脳血管が詰まると脳梗塞が生じます。また歯周病の人は健康な人の約2.8倍も脳梗塞になりやすいと言われています。
血圧やコレステロール、中性脂肪が高めの方は動脈疾患予防のためにも歯周病予防や治療はとても重要です。
糖尿病
先月のコラムでもお話しした通り、歯周病は以前より糖尿病の合併症の1つと言われてきました。最近では、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係性も明らかになり歯周病と糖尿病は互いに悪影響を及ぼし合っているということになります。歯周病の治療をすることで糖尿病の数値も改善していくということもわかっています。
低体重児早産
妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、低体重児および早産の危険度が高くなることが指摘されています。妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンが歯周病原細菌の増殖を促すことがわかっています。口の中の歯周病菌が血中に入り、胎盤を通して胎児に直接感染するのではないかと言われており、その危険率はタバコやアルコール、高齢出産よりもはるかに高い数字になります。
生まれてくる元気な赤ちゃんのために、妊産婦検診をしっかり受診しましょう。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは食べ物や異物を誤って気管や肺に飲み込んでしまうことで発症する肺炎で、特に機能や免疫力の衰えた高齢者に多く見られます。
健常な人は誤って気管や肺に異物が入りそうになると、咳をして異物が入らないよう守ることができますが高齢になるとそのような機能が衰えるため、食べ物などと一緒にお口の中の細菌を飲み込み、その際むせたりすると細菌が気管から肺の中へ入り誤嚥性肺炎を引き起こします。
誤嚥性肺炎の原因となる菌の多くは歯周病菌であるとも言われています。
骨粗鬆症
骨粗鬆症は、全身の骨強度が低下し骨が脆くなって骨折しやすくなる病気で罹患者の約90%が女性です。閉経による卵巣機能の低下により骨代謝にかかわるホルモンのエストロゲンの分泌により発症します。
閉経後の骨粗鬆症の患者さんにおいて、歯周病が進行しやすい原因として考えられるのがエストロゲンの欠乏です。
エストロゲンの分泌が低下することで全身の骨が脆くなるのとともに歯を支えている歯槽骨も脆くなってしまいます。
また骨粗鬆症の薬として用いられるビスフォスフォネート製剤(BP系薬剤)というものがあり服用している方が抜歯などを行うと周囲の骨が壊死するなどのトラブルが報告されています。服用がある方は処置前に歯科医院で必ずそのことを伝えましょう。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は脳に「アミロイドβ」というタンパク質が蓄積されることによって発症するとされています。
通常アミロイドβは分解されて排出されるのですが、何らかの理由で排出されずに蓄積してしまうと脳の機能が低下してしまいます。進行すると、タウという異常なタンパク質が溜まり神経細胞を死滅させてしまいます。
認知症を防ぐためには、アミロイドβの蓄積を防ぐ必要がありますが、歯周病菌がアミロイドβの生成・蓄積を促進させることがわかってきました。徹底した歯周病予防をおこなうことが重要です。
メタボリックシンドローム
詳しいメカニズムは解明されていませんが、歯周病の病巣から放出される歯周病菌由来の毒素であるLPSやTNFαは脂肪組織や肝臓のインスリン抵抗性を増加させ、血糖値を上昇させます。
また重度歯周病患者では血中CRP値が上昇し、動脈硬化や心筋梗塞発症のリスクと密接に関与すると考えられています。
このように歯周病とメタボリックシンドロームの関連性が注目されています。
まとめ
歯を失う主な原因は歯周病と虫歯です。歯周病と虫歯は細菌の塊である歯垢(プラーク)が原因です。そのため歯垢を長期的にコントロールすることが今後のお口の中の健康にとても大切になります。
今回お話ししたように歯周病は多くの全身疾患との関連性が報告されています。
デュランタデンタルクリニックでは、患者さん一人一人に担当の歯科衛生士がつきお口の中をより良い環境にしていくためのサポートをしていきます。
お口の中だけでなく全身の健康のためにも、歯科医院で定期的な予防治療や検診をうけて歯周病を予防しましょう。
この記事の監修者
デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科
院長坂本 果歩
地元の大分県の大分県立大分上野ヶ丘高等学校卒業後、
愛知学院大学歯学部歯学科に進学、卒業しました。
その後、愛知学院大学附属病院での研修を経て、愛知県内の地域密着型の医院、都心型の医院で勤務することによりたくさんの治療のスキルを学びました。
歯周病治療に力をいれた、再治療の少ない治療を目指して口腔外科、インプラント、矯正などの幅広い診療も行っています。
学歴・経歴
2016年 愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
2017年-2018年 愛知学院大学附属病院 勤務
2018年-2023年 愛知県内 歯科医院 勤務
2021年-2022年 藤田医科大学 口腔外科 研究生
2022年 名古屋市 歯科医院 分院長
2023年 デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科開業
現在に至る
所属団体
日本臨床歯周病学会
日本口腔インプラント学会
愛知インプラントインスティチュート
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会