痛くない虫歯もある!虫歯の【5つのステージ】を徹底解説~それぞれの痛み・治療法の違い~
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歯の神経にはどんな役割があるの?神経を「抜く」ほど虫歯が進行する前に知っておきたい治療の影響
2023.7.10 歯科治療こんにちは、デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科院長の坂本果歩です。
虫歯がひどくなると、奥にある神経にまで達してしまうことがあり、そうすると中の神経が細菌によって感染するため神経を抜かざるを得なくなります。
神経は痛みを感じる以外にも歯にとって重要な役割を果たしているものなので、できるだけ残すことが大切なのです。
みなさんは歯の神経を抜いたことがありますか?
突然「神経を抜く」と言われたら驚いてしまいますよね。
そこで今回は歯の神経についてご説明させてもらいます。
歯の神経の役割
歯の神経は、正確には歯髄(しずい)と呼ばれ、神経の他にも細かい血管など他の組織も含みます。
①異常を知らせる
できれば感じたくないと考えてしまう”しみ”や”痛み”ですが、虫歯や歯周病をはじめとする、歯に加わる様々な刺激をセンサーとして感知し、脳に知らせます。
〜しみ、痛み〜
冷たいものがしみる、熱いものがしみる、甘いものがしみる、歯磨きでしみる
噛むと痛い、安静時も痛い、痛みに波がある、鈍数がある、ズキズキするなど
②歯に栄養を与えて丈夫にする
歯髄の中の毛細血管が、歯の象牙質にミネラルやカルシウムなどの栄養を送る働きをしています。これによって歯に適度な弾力性をもたせ、毎日の咀嚼に耐えられる丈夫な歯が維持されます。
③防御機能
歯髄の中にある免疫細胞が細菌に抵抗したり、外部からの刺激に対して歯髄の内側から象牙質を形成したりして歯髄を細菌や刺激から守ります。
神経を抜く治療(抜髄)が必要となる症状
・ズキズキとした強い痛みがある
・強い痛みがあるが、どの歯が痛いのか分からない
・歯の痛みに加え、頭痛もある
・触れると強く痛む歯がある
・噛むと響く感じする。
・痛み止めが効かない、または和らぐが効れると痛みがぶり返す
・冷たい水を口に含むと一瞬和らぐ
・冷たいものより、熱いものがしみる
この場合は、神経にまで虫歯が達して歯髄が強く炎症を起こしているため抜髄になる可能性があります。
抜髄になる場合は虫歯がレントゲンで神経まで達している場合ですが、レントゲンは二次元なので、最終的な判断は虫歯の除去を行い神経まで達しているかの判断になります。
できるだけ神経は残した方がいいので一層でも神経との壁がある場合は神経を残して神経を保護するお薬をいれ、経過をみます。
その場合、しみる症状が強くでる場合がありますが神経の一時的な反応であれば問題はありません。
神経の近くを削ることによって神経に刺激がわたりしみる症状が出ていますが神経が感染して出てる痛みとは違います。2週間から1ヶ月くらいでしみる症状が落ち着けば神経を残すことが可能です。
神経まで一層壁があるものでも、治療後、何もしていなくてもズキズキ痛みが強く出る可能性があります。そういう場合は虫歯を除去してもすでに神経が細菌によって感染がおこっています。そういう場合は抜髄が必要です。
このように治療後痛みがでる可能性はありますが、神経を残すことが大切なので当院ではできるだけ残せるものは残せる治療を行っています。
抜髄治療で炎症がかなり大きい場合は麻酔をして治療をおこないますが、痛みが強いと麻酔が効きにくいため慎重に治療を行っていきます。
最も麻酔が効きづらいのは下の奥歯です。下の奥歯で麻酔が効きづらいときは親知らずの抜歯の時などの伝達麻酔を用いることによって効かせることができます。
神経を抜くことで起こる悪影響とは
①歯が死んで脆くなる
歯髄を失った歯(無髄歯)は、歯が死んで脆くなります。
先述で歯髄の役割をお伝えしましたが、歯髄には栄養や水分を歯に与えています。ですが神経を抜いてしまうことで、栄養の供給がなくなり、枯れ木のようにスカスカになって脆くなります。
強い食いしばりや歯ぎしり、外部からの衝撃、硬いものを噛んだ際などに、健康の歯と比べて容易に歯が割れたり、折れやすくなってしまいます。
②歯の色が変色する
歯への栄養の供給がなくなるため、歯の内部のタンパク質が変質、変色してきます。そのためグレーがかった色、もしくは茶色っぽい色になってくることがあります。
③トラブルに気づけなくなる
異常を知らせるセンサーがないので、神経を抜いた歯の内部に細菌が侵入してきてもそれを感知することができません。そのため、内部まで感染が進み歯の根っこの周囲の骨まで溶かして最悪の場合、歯を抜かなければならなくなることもあります。
④歯ぐきに痛みが出る場合がある
神経を抜いてからしばらく時間が経ったあと、歯ぐきに腫れや痛みが出る場合があります。
神経の治療(根管治療)で取り残してしまった細菌、あるいは治療後に根管内に侵入した細菌によって歯の根っこの先で感染が起こることがあります。膿が出るなどして、激しい痛みを伴うことがあります。
⑤再治療が、必要になることが多い
神経の治療の成功率は30〜50%ともいわれています。
これだけ成功率が低いには理由があります。神経を三次元的にみるとすごい曲がっていたり、側枝と言われる細かい枝があったり、楕円形のものもあります。そういう形の根管治療は細菌を取りきれず、再治療になること多いです。また、神経の治療してから次の治療までの期間が空きすぎると中で感染が広がってしまい、感染を取り除くことが困難になってしいます。
神経の治療は一回目で痛みがなくなっても、その治療が終わるまで継続的に通うことが大切です。
また、一度神経の治療を行なった歯の根の先に膿が溜まったり、痛みが起きると再治療を行いますが、成功率は低いため、また再治療をしなければならなくなる可能性があります。
何回も再治療を行っても、今度こそは治るという保証はないのです。逆に再治療を重ねるたびに治りにくいとさえ言われています。
すでに、かなり大きい金属の土台が入っていたり、状態が悪く再治療ができない場合もあります。
そういう場合は歯を残すために外科的に、歯根端切除術というオペを行うこともあります。
再治療がまだできる場合ならまだいいですが、歯が割れたり、感染して歯の周りの骨が大きく溶けてなくなってしまっている場合は歯を抜かなければなりません。
このように神経を抜いてしまうと歯の寿命は縮まってしまいます。
過去のデータでは神経のない歯の喪失リスクは、健康な歯とくらべると”前歯では1.8倍、奥歯ではなんと7.4倍”にもなると驚きの数字が出ています!
当院では、虫歯が大きくてもなるべく神経を残す努力をしています。ルーペを使用して神経ぎりぎりの虫歯でも少しずつ虫歯を除去して、まずは神経を残し、それでも痛みがでるようであれば歯の神経を抜くという方針です。
(最初から完全に神経にまで達してしまっているケースもあるため、その場合は患者様にもしっかりと説明をし神経を抜いていきます。)
「もう少し早く来院してくれたら神経を残すことができたのに…」と思うことも多々あります。
自分の歯で一生噛むためにも定期的なメンテナンスに行くことをおすすめします。
虫歯も歯周病も初期の段階では痛みがでません。痛みは強く出るのは虫歯が大きい場合、神経まで虫歯が達している場合です。自分の歯を守るためには自覚のないうちに定期的に検診を行い治療することが大切です。
歯はできるだけ色々な治療方法で残せるように努力していますが、そのまま抜かなければ他の歯や骨に影響を与えてしまう場合もありますので、そういう場合は歯を抜かなければないません。
そういうことのないように早期発見・早期予防が1番大切です。
この記事の監修者
デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科
院長坂本 果歩
地元の大分県の大分県立大分上野ヶ丘高等学校卒業後、
愛知学院大学歯学部歯学科に進学、卒業しました。
その後、愛知学院大学附属病院での研修を経て、愛知県内の地域密着型の医院、都心型の医院で勤務することによりたくさんの治療のスキルを学びました。
歯周病治療に力をいれた、再治療の少ない治療を目指して口腔外科、インプラント、矯正などの幅広い診療も行っています。
学歴・経歴
2016年 愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
2017年-2018年 愛知学院大学附属病院 勤務
2018年-2023年 愛知県内 歯科医院 勤務
2021年-2022年 藤田医科大学 口腔外科 研究生
2022年 名古屋市 歯科医院 分院長
2023年 デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科開業
現在に至る
所属団体
日本臨床歯周病学会
日本口腔インプラント学会
愛知インプラントインスティチュート
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会