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歯周病は糖尿病の6番目の合併症と言われるのは、なぜ?歯周病のプロである歯科衛生士がメカニズムを解説
2024.6.24 歯周病・予防治療こんにちは、デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科の歯科衛生士の井尾です。
みなさんは糖尿病を患う方は歯周病になりやすいことをご存知ですか?
一方で、歯周病になると血糖コントロールが悪くなるとも言われています。
歯周病は細菌感染による慢性の炎症です。
進行すれば膿が出たり歯がグラグラして抜けてしまうことは良く知られていますが、研究によりさまざまな生活習慣病と関係があることがわかってきました。
その1つが糖尿病です。今回は糖尿病と歯周病の関係についてお話しします。
糖尿病が歯周病に与える影響とは
統計的に、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯周病に約2.6倍以上かかりやすくなることが判っています。
糖尿病は『インスリンの作用不足によって慢性高血糖をきたし、長期化することで特有の合併症を生じるとともに、動脈硬化をも進行させる病気』(日本糖尿病学会より)と言われています。
糖尿病に特有の合併症として糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害の3つがあります。
これら3つの固有の合併症に加え、糖尿病になると動脈硬化(体に栄養や酸素を運ぶ大きな血管が狭窄する病気)が進行し、心筋梗塞(心臓の筋肉に栄養を供給する血管が詰まってしまい、心臓を動かす筋肉の細胞が壊死してしまう病気)や脳卒中(同様に脳内の神経細胞に栄養を供給する血管が詰まってしまい、脳神経に障害が起こる病気)を併発しやすくなります。これらは、固有の合併症ではありませんが、糖尿病があるとより進行しやすくなることがわかっています。
そして特に、歯周病との関連は近年よく研究されてきており、歯周病は『糖尿病の6番目の合併症』であると認識されるようになりました。つまり糖尿病があると歯周病の進行が著しく促進されます。特にヘモグロビンA1cと呼ばれる糖尿病の検査値が7%を超えると歯周病の悪化も早まります。また、糖尿病になると傷の治りも悪くなるので、抜歯や手術等の大掛かりな歯科治療をしなければならなくなる前に、歯周病も予防しておくことが重要です。
糖尿病が歯周病に影響を与えるメカニズム
①血管障害による歯肉の組織修復能力の低下
糖尿病による血管障害は、歯肉にも起こります。血管障害が起こると血流が悪くなるため、歯周組織は酸素や栄養不足に陥ります。低酸素・低栄養状態になると歯肉の生体防御機能や組織修復能力が低下します。このため、歯周病菌による炎症が進行しやすい環境となります。
②全身の免疫力の低下
糖尿病になると血流が悪くなるため、血液中の白血球が感染部位に到達しにくくなります。
このため、全身の免疫力が低下します。
歯茎も白血球による免疫機能が低下した状態となり、歯周病菌に対する抵抗力が落ちた状態となります。
③唾液の分泌量の低下
健康な方の場合,1 日の唾液量は 800 – 1500 mL分泌されています。
しかし、糖尿病の人では高い割合で唾液の分泌量が低下し、口腔乾燥などの症状が生じるようになります。
唾液には細菌の増殖を抑えるIgAやラクトフェリンなどの抗菌物質が含まれています。
このため唾液の分泌が低下すると抗菌作用も低下し、歯周病菌が増加しやすい環境となります。
歯周病が糖尿病に影響を与えるメカニズム
①炎症性サイトカインによるインスリン抵抗性の増大
歯周病菌が出す内毒素が血管内に侵入すると、TNF-αという炎症性サイトカインの産生が促進されます。歯周病の炎症が長期化すると、血液中にTNF-αがたくさんある状態が続くことになります。
TNF-αにはインスリンの働きを妨げる作用があります。
インスリンは血糖値を下げる作用があるホルモンです。インスリンの働きが妨げられると、インスリンの量が十分にあっても血糖値が下がらなくなります。
そうすると身体はどうにかしようとして、より多くのインスリンを産生するようになります。
このインスリンが過剰に産生されて血中濃度が高濃度になると、”高インスリン血症”となります。長期に渡ってインスリンの過剰産生が続くと、インスリン産生細胞である膵β細胞が疲労して、機能が低下することによって重篤な糖尿病となります。
②歯周病による食べる機能の低下
歯周病が中等度〜重度に進行すると歯がグラグラになったり、歯が抜けてなくなります。
歯がなくなると物を噛み砕いたり、すり潰すなどの機能が低下します。
特に歯が20本未満になると有意に食べられるものが制限されるようになります。
そうなるとバランスの良い食事ができなくなります。また、歯がなくても食べられる柔らかい食べ物は高血糖のものが多く、糖尿病の増悪因子となります。
歯周病治療の効果
歯周病の治療を行い、前項でお話ししたTNF-α(インスリンの働きを妨げるもの)の産生を抑制するこで糖尿病の改善が期待できると考えられるようになりました。
一般に歯周治療で改善する糖尿病の検査値(ヘモグロビンA1c)の改善度は平均0.4%くらいと言われています。これは糖尿病のお薬1剤分に匹敵するという人もいます。
まとめ
したがって重度の歯周病を併発した糖尿病患者さんは、糖尿病の管理の一環として歯周病を治療するとともに再発予防に努めることが大事です。
そのためには、かかりつけの歯科医院に定期的に受診することをおすすめします。最近では、糖尿病手帳に歯科受診の記録も記載できるようになりましたので、これを活用して歯科と医科の連携も取りやすくなっています。
デュランタデンタルクリニックでは歯周病治療も行っております。いつでもお気軽にご相談下さい。糖尿病も歯周病も予防していきましょう!
この記事の監修者
デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科
院長坂本 果歩
地元の大分県の大分県立大分上野ヶ丘高等学校卒業後、
愛知学院大学歯学部歯学科に進学、卒業しました。
その後、愛知学院大学附属病院での研修を経て、愛知県内の地域密着型の医院、都心型の医院で勤務することによりたくさんの治療のスキルを学びました。
歯周病治療に力をいれた、再治療の少ない治療を目指して口腔外科、インプラント、矯正などの幅広い診療も行っています。
学歴・経歴
2016年 愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
2017年-2018年 愛知学院大学附属病院 勤務
2018年-2023年 愛知県内 歯科医院 勤務
2021年-2022年 藤田医科大学 口腔外科 研究生
2022年 名古屋市 歯科医院 分院長
2023年 デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科開業
現在に至る
所属団体
日本臨床歯周病学会
日本口腔インプラント学会
愛知インプラントインスティチュート
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会