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世界中の虫歯を減少させた「フッ素」の、虫歯予防に有効な3つの働きと正しい利用方法を歯科衛生士が解説
2024.1.29 歯周病・予防治療こんにちは、デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科の歯科衛生士の井尾です。
みなさんは、歯医者さんで定期的にフッ素を塗ってもらっていますか?当院では、初診時(クリーニングを行った場合)やメンテナンス時に必ず塗布しています。
時々「フッ素は、塗りたくない」とおっしゃられる方もいらっしゃいます。恐らく身体に対する影響を心配されている方だと思います。
今なおネット上では、「フッ素は危険」「フッ素は毒」などと悪い噂が出回っています。
今日はそんなフッ素についてお話ししていきます。
フッ素=毒の誤解
フッ素(F)とは、もともと自然界に存在する元素です。自然界では土壌に最も多く含まれ、他にも海水などに含まれます。また、緑茶やウーロン茶、海産物、お肉、野菜、果物など様々な飲食物にも含まれています。
このように、普段から口にするものに含まれているものですが、それでもなぜフッ素は危険だと言われているのでしょうか。
実は、元素のフッ素単体は猛毒です。ですが、フッ素は反応性が高く、ほとんどの単体元素を酸化してすぐに化合物(フッ化物)を作ります。そのため、毒であるフッ素単体の状態ではほとんど存在しません。
歯に塗るフッ素は、フッ化ナトリウム(NaF)で化合物の1つです。正しく使用すれば、歯に塗っても人体に悪影響はありません。そして、物価物の使用量、濃度は厚生労働省によって厳しく規制されているため、市販のフッ化物と歯科医院で使用するフッ化物のどちらも安全に使用できます。
量に対する誤解
身体に良いものでも摂れば摂るほど効果が上がるわけではなく、摂りすぎても悪い面がでてくることはよくあります。例えば塩でもサプリメントでも摂りすぎると害になりますよね。
当然フッ化物にもとりすぎれば害はあります。
そのため、1日あたりのフッ化物摂取の上限量が定められています。
一度に過剰摂取すると急性中毒を起こします。症状としては、悪心・嘔吐などが考えられます。ですが中毒量は体重1kgあたりフッ素量2mg(フッ化ナトリウム3.7mg)です。これは、フッ素洗口液(フッ素のうがい薬)を180mlを1度に飲み込むこと(ボトル半分以上を飲むこと)です。
体重60kgであれば1000ppmF(フッ素濃度)配合の歯磨き粉を2本分くらい一気飲みすると発生するということです。現実的ではなく、実際に事故例は現在のところないそうです。
フッ素の効果
フッ素(フッ化ナトリウム)には大きく3つの効果があります。
再石灰化を促進すること
フッ素には、歯の再石灰化を促して健康な状態に保つ働きがあります。食事をすると、虫歯菌が糖質を代謝して酸を作り、その酸が歯を溶かすことでカルシウムやリンなどのミネラルが失われます。これを「脱灰」といい、この状態が続くと虫歯になるのです。ただし、唾液の作用によって、カルシウムやリンが歯へと戻る「再石灰化」も起こるために、すぐに虫歯になるわけではありません。
フッ素には、この「再石灰化」を促して虫歯予防をするとともに、初期虫歯を改善する効果が期待できます。
歯質の強化
歯質を強化して酸で溶けにくい歯にします。フッ素と共に修復された歯の結晶は、元々の歯質よりも丈夫になり、より強い歯になります。
虫歯菌の活動を抑える
フッ素がもつ抗菌作用のおかげで、虫歯菌が活動しにくくなります。
このように、フッ素には虫歯予防に効果的な作用があります。実際にフッ素が使われるようになってからは、世界中の虫歯の数が減りました。
変化するフッ素の利用方法
そして去年には、日本の歯磨き粉の利用方法が変更となりました。
う蝕予防のためのフッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法 日本小児歯科学会のHPより引用
変更点としては、
・歯が生えてから2歳までは500ppmFまでとされていたものが、1000ppmFまでとなったこと
・3〜5歳は、500ppmFまでとされていたものが、1000ppmFまでとなったこと
・6〜14歳の区分は削除されて、6歳以上は成人と同様に1500ppmFとし、使用量は歯ブラシ全体となったこと
今まで日本では、世界基準と比べてフッ化物濃度が低い傾向にありましたが徐々に近づいてきています。フッ素がいかに虫歯予防に有効なのか、国をあげて使用をおすすめしていることがわかると思います。
正しく利用して虫歯予防をしましょう。
まとめ
このように、フッ素の過剰摂取によって中毒症状が現れることがありますが、フッ素を体内に取り込まないフッ素入り歯磨き粉や歯医者さんでのフッ素塗布は安全といえます。フッ素を有効に使うことで虫歯のリスクを大きく下げられることは、科学的に証明されており、とてもメリットのある方法です。もちろんフッ素は、必ず虫歯を0にできる魔法のお薬ではありません。虫歯は、様々な要因が関わり合って発生する病気であり、生活習慣だったり食生活、唾液の量や質、菌の量や質など多くのリスク因子が重なり合って発生します。なので虫歯予防を考える上で各々に合った方法を選択するのが大切です。
もちろん人それぞれ考え方は違うので、「絶対塗った方がいい!」とは言いません。選択は個々の自由です。自分に合った予防をみつけて、虫歯で悩まない健康的な口腔内を作りましょう。
デュランタデンタルクリニックに置いてあるフッ素入りの歯磨剤なども、また改めて詳しくご紹介させて頂きますね。少しでもみなさんの参考になればと思います。
この記事の監修者
デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科
院長坂本 果歩
地元の大分県の大分県立大分上野ヶ丘高等学校卒業後、
愛知学院大学歯学部歯学科に進学、卒業しました。
その後、愛知学院大学附属病院での研修を経て、愛知県内の地域密着型の医院、都心型の医院で勤務することによりたくさんの治療のスキルを学びました。
歯周病治療に力をいれた、再治療の少ない治療を目指して口腔外科、インプラント、矯正などの幅広い診療も行っています。
学歴・経歴
2016年 愛知学院大学歯学部歯学科 卒業
2017年-2018年 愛知学院大学附属病院 勤務
2018年-2023年 愛知県内 歯科医院 勤務
2021年-2022年 藤田医科大学 口腔外科 研究生
2022年 名古屋市 歯科医院 分院長
2023年 デュランタデンタルクリニック栄歯科・矯正歯科開業
現在に至る
所属団体
日本臨床歯周病学会
日本口腔インプラント学会
愛知インプラントインスティチュート
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
愛知県歯科医師会